2008年12月02日

真冬-V

 リコは母親の亜美に、「さっきの返事は当然断るよね?」亜美はその言葉を聞いて、「でも、お母さんが断ってもリコとも結婚しないと言ってたわよ」お母さんが答えると、リコは思い切ってあの時の事を伝えた。お母さんは驚きを隠せずに、「そう・・・」と小さな声で答えた。だからね!彼と結婚してもいいよね?リコの質問などもう耳にはいっていないような目で、呆然としていた。お母さん!リコの声で再び我を取り戻して、うん?とリコに聞き返した。「純一さんと結婚してもいいよね?」その言葉に、「私が?」と思わず聞き返していた。
「リコは、あたしよっ!」と大きな声で叫んだ。「お母さんは純一さんの事好きなの?」リコが聞くと、黙って頷いた。「じゃー正々堂々と勝負しましょう!」リコは言い、お母さんは黙って首を横に振った。そして、「リコはお母さんと純一さんとはダメなのね?」と聞くと、あたしの彼として紹介したんだよ!リコが言い、「解かったわ」と答えた。
なにがわかったの?リコが聞くと、純一さんはこのまま誰とも結婚しないと言う事がわかったの。と答えた。リコはお母さんを睨んで
あたしが彼と結婚する!と言い、またしてもお母さんは黙って首を横に振った。
 亜美は考えていた。まさかこんな形で純一と会うなんて・・・再会できたことは正直に嬉しい。しかし・・・よりによって娘の彼となると、そして多分、娘のリコの初恋の相手だろうと思った。その2人が男と女の関係になるとは・・・亜美は複雑な気持ちだった。
思いを18年まえにタイムスリップさせていた。
大学をこっちの方にすると郷里を離れる前に、出発の日、待ち合わせをした。あの樅の木の下で。彼は私に言っておきたい事があるから見送りに来て欲しいと言った。その言葉がなんだったのかはわかっている。プロポーズの言葉と将来の約束だったに違いない。でも、私は、家を出るときに父に見つかって出る時間が遅れた。樅の木に行って見たけど彼はもういなかった。そして・・・私は父の進める見合いによって前の主人とであって結婚した。そしてリコが生まれたが、どうしても愛せなかった。そして離婚。この18年間一生懸命にリコを育ててきた。素直でいい子に育ってくれた。そのリコが、初めて好きになった相手が昔の自分の恋人だったとは、運命ってなんて皮肉なのかしらと亜美は思っていた。
リコはどうやら本気のようだが、純一はどっちかと言うとリコに対して本気とは思えない。だったらなぜ2人は関係をもってしまったのだろう・・・昔の純一なら決して軽はずみな事をする人ではなかった。18年という年月で、彼も変わってしまったのだろうか・・・相手がリコでないなら、純一の言葉を素直に受け取れたと思う。しかし、事、娘のリコが絡むと、純一との事を真剣に考えれば考えるほど、泥沼に足を囚われて身動きできないと感じた。
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posted by Natu at 19:16| ロサンゼルス 霧| Comment(0) | 樅の木の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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